【第1回】E-learning教材の視聴時間によって人事評価が違うってホント!?

データでワカルレポート

ワカさんワカさん
こんにちは、ワカです。第1回の数字でワカルレポート、どうぞよろしくお願いいたします。さて、早速ですが私たちが発信しているWaculba(ワカルバ)というサービスは視聴時間を管理できるE-learning学習システムなので、視聴者さんがどれくらい動画をたくさん見ているかがわかります。いっぽうで、Waculbaを運営している㈱日本経営は、人事評価Navigatorという、人事評価をお手伝いするシステムも人気です。今回、この2つのデータを組み合わせた解析を行ってみました。学習教材の利用の仕方と人事評価の関係に興味がある方はぜひ最後までご覧ください!
ワカさんワカさん
ちなみに、数字でワカルレポートは結構長いし、ガチ解析データがポンポン出てきます。グラフが嫌いな方はご注意を

方法

 ある法人について、①人事評価 ②自己評価 ③Waculba視聴時間の3つのデータが揃っている個人のデータ203名分を用い、指標間の相関解析や平均値の差の検定を行いました。

仮説

ワカさんワカさん
Waculbaの動画を見ているのは、自分の能力が足りていないと思っている人なのかもしれないなと考えました。したがって、自己評価が低い人ほど、視聴時間が長くなるのではないかと考えました。ちなみにWaculbaの動画は、E-learningだけあっていつ、どのように見てもOKです。必修の動画ではなく、見ても見なくてもいい動画をどれくらい見ていたかを今回の指標にしています

 

結果

 まずは、全体的にどのようなデータだったのかを見ていきましょう。図1は、横軸を人事評価、縦軸を動画視聴時間(秒)とした散布図です。

図1 人事評価と動画視聴時間の散布図。視聴時間は人事評価を行った期間のデータ。もっとも多い視聴時間は55万秒であり、このグラフには表示していない。

ワカさんワカさん
やや、さっそく面白そうなデータですね。人事評価が低い人は、ほとんどが視聴時間が短く、逆に人事評価が高い人は長く動画を見ているような傾向がありそうです。これは分析のしがいがありそうです
ワカさんワカさん
さて、視聴時間はかなり個人間のばらつきが多そうですし、外れ値の影響が強そうです。そこでまずは、こちらの法人が設定した必修視聴動画のうち、どれくらいを消化できたかで達成群と未達群の二つに分けて、それぞれのデータを見ていきましょう。私の仮説では、未達群は達成群に比べて自分に自信がない方だから、自己評価が低いはずです!

 

必修課題の消化率によって人事評価・自己評価データを2群に分け、分布を示した。図2(左)は、それぞれの群での人事評価のヒストグラムを示している。必修達成群でより人事評価が右側に分布していることがわかる。対応のない平均値の差の検定を行ったところ、必修達成群で有意に人事評価が大きかった(p=0.00008)。

図2 必修達成率による自己評価および人事評価の違い

ワカさんワカさん
私の仮説は大外れでした。必修達成群では必修未達群よりわずかに自己評価が高いという結果はありましたが (p=0.03) 、人事評価でより明瞭な差が観察されました。これは面白いデータですね。因果関係はわかりませんが、人事評価が高い人のほうがしっかり必修課題に取り組んでいることがわかります。特に面白いのが、自己評価ではあまり明瞭な違いがみられないことですね
ワカさんワカさん
さて、真面目に必修課題に取り組む方のほうが人事評価が高いのはなんとなく想像できる結果でした。次に、必修ではない教材を自己研鑽のためにどれくらい見るか、という視点で解析していきましょう

 

必修に設定されていない動画の視聴時間によって、人事評価・自己評価データを2群に分け、分布を示した。図3(左)は、それぞれの群での人事評価のヒストグラムを示している。必修達成群でより人事評価が右側に分布していることがわかる。対応のない平均値の差の検定を行ったところ、必修達成群で有意に人事評価が大きかった(p=0.001)。一方で、自己評価には有意な差は認められなかった。

図2 非必修動画の視聴時間による自己評価および人事評価の違い

ワカさんワカさん
ううむ、どうやら自己研鑽に費やした時間の大きさでも、必修の達成率と同じように人事評価に関係しており、自己評価には影響していないようです。これは面白いですね。つまるところ、人事評価が高い人は、必修だから教材から学ぶというわけではなく、自己研鑽の意欲も高いということです。学習への姿勢と評価の間の関係が見えてきました
ワカさんワカさん
さて、視聴時間に基づいて大きくデータを二つに分けるということをしましたが、視聴時間と人事評価の影響をもっと細かく見ていきましょう。例えば、1時間以上の動画を見ていると、急にグンと人事評価が伸びるのでしょうか。あるいは5時間以上はそれ以上は見ても人事評価に影響しないのでしょうか。それとも動画を見た量に伴って、じわじわと人事評価が高くなっていくのか。ちょっと込み入った解析をしてみましょう」

全体を2つの群に分けるのではなく、もっと細かく分けて解析した。189名のデータを、視聴時間順に並べ替え、約19組(1組10人)に分割。それぞれの群で自己・人事評価の平均を求めた。

図3左では、視聴時間で約20組に分割したグループのそれぞれで平均の自己評価をプロットした。最も視聴時間が長いグループは右端に、最も短いグループは左端にプロットした。視聴がゼロのグループは白い丸でプロットした。

ワカさんワカさん
これはすごい!視聴時間が長ければ長いほど、人事評価が高いということがはっきりと示されています。無視聴や視聴時間が短いグループに比べ、視聴時間が長いほど人事評価が上がっていきます。そして、その上昇の関数は一定で、どこかで上昇率が停滞したり、逆にちょっと見ただけでは効果が薄いということでもなさそうです。
ワカさんワカさん
右側は自己評価ですが、そちらでは明らかに同じような関係は観察されません。やはりこれは人事評価に特異的な関係のようです。

考察

ワカさんワカさん
はじめの仮説は外れてしまいましたが、興味深いことがわかりました。<strong>視聴時間と人事評価はきれいに相関する。</strong>注意が必要なのは、<strong>動画を見たから人事評価が上がったのか、人事評価が高いような人はそもそも自己研鑽として動画を見るのか、どちらが先かという因果関係はわかりません</strong>。また、仕事への意識の高さのような、共通した変数が人事評価と視聴時間の両方に影響を与えた可能性もあります
ワカさんワカさん
とはいえ非常に頑健な効果だと言えるでしょう。ここでひとつ疑問なのは、職位や立場などによる影響はどの程度あるのか、ということです。これについては追加の解析を行っており、主任以上という役職者だけで同様の解析を行ったところ、よく似た結果を再現しました。今後の課題としては、やはり因果関係が気になります。学習の量と人事評価という、かなり離れた数値の間に関係があることがわかったので、今後はきちんと学習ができたかという定量的な数値や、チーム内の結束力、また各数値に時間的な推移も解析していきたいですね

 

結論

ワカさんワカさん
第1回目の数字でワカルレポートは、自由に視聴できるE-learningの視聴時間が長い人ほど、人事評価が高いというお話でした。皆さんもぜひとも院内教育に視聴時間の管理が可能なE-learningを利用してみてくださいね

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※1 2025/6/13  階層別データについての記述を追加

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