電子処方箋、診療所での普及進まず

ワカさんの医療ニュース

クリニックの現実と乖離する制度設計

2025年4月、診療報酬上の「医療DX推進体制整備加算」が6区分に再編され、電子処方箋導入の有無が加算点数に影響するようになった。しかし、地方や農村部の小規模診療所における電子処方箋の導入は依然として進んでいない。

2024年末に日本医師会が公表した全国調査(有効回答数4,454)によれば、診療所における電子処方箋の導入率は14.5%にとどまり、実際に運用している施設は4.6%に過ぎない。導入済みだが未運用というケースも多く、その理由として「地域薬局が未対応」「スタッフの準備不足」「患者の理解が得られない」などが挙げられている。

高額だが、メリットを実感できない

また、未導入の施設では「システム費用が高い」「メリットを感じない」「ICT人材の不足」といった現実的な課題が大きく立ちはだかっている。実際に運用している診療所でも、「メリットを実感できない」(46.9%)、「作業負担が増えた」といった否定的な声が多く、政策目標と現場の実態には明らかな乖離が見られる。

高齢化が進み、ICTに馴染みのない患者を多く抱える地方の診療所では、電子処方箋の導入そのものが目的化してしまえば、かえって現場の負担となりかねない。
患者中心の地域医療を守るためには、制度の柔軟性や支援の在り方を見直す必要がある。普及率だけを指標にせず、「現場に即した導入支援」が求められている。

 

ワカさんのひとこと

ワカさんワカさん
電子処方箋の導入は単なる機械の入れ替えではなく、診療体制や業務の見直しを伴う“組織変革”です。特に小規模診療所では、人・時間・費用の制約が大きく、導入が進まないのは当然の結果とも言えます

 

ワカさんワカさん
制度上の優遇措置ばかりが先行し、現場の事情が置き去りにされている今、問われるべきは“導入の有無”ではなく、“地域医療にどう資するか”という視点です。一律の推進ではなく、地域や規模に応じた柔軟な制度設計と支援が不可欠です

 

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